グローバル企業の為替幻想: トヨタ自動車の決算書をUチャート化してみる
※以前別の場所で書いた文章を備忘的に書き記しておきます。
【投稿年月日】2009-03-30 【ジャンル】EDIUNET
現在、山根治blogでは「100年に1度のチャンス」が連載されており、その中で『金融危機以前の』トヨタ自動車についての財務分析が行われています。かなり興味深い内容なのでご一読することをお勧めしますが、ここでは別の角度からトヨタ自動車の決算書を見てみることにします。利用するのはEDIUNET.COM。この財務分析ツールの特徴の一つに、為替レートの自動変換機能があります。23の通貨に対応しており、為替レートはアメリカのFRB(連邦準備理事会)が毎月公表するデータをベースにしています。
トヨタ自動車の5期分(2004年3月期~2008年3月期)の決算書についてUチャート(=財務諸表を円グラフ化したもの)を見ていきます。最初の通貨は日本円です。
トヨタ自動車-Uチャート分析:日本円(*JPY)
ediunet.com/company/7203/1/?moneyselect=1&m... 貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)ともに、2004年から2008年にかけて円グラフが大きくなっていることが分かります。なお、総資産等を表にすると以下のようになります。
科目 |
2004年 |
2008年 |
増減率 |
備考 |
総資産 |
22兆円 |
32.4兆円 |
+1.47倍 |
貸借対照表(BS)の円の大きさに対応 |
純資産 |
8.1兆円 |
11.8兆円 |
+1.45倍 |
貸借対照表(BS)の黄色い部分 |
売上高 |
17.2兆円 |
26.2兆円 |
+1.52倍 |
損益計算書(PL)の円の大きさに対応 |
当期純利益 |
1.1兆円 |
1.7兆円 |
+1.54倍 |
損益計算書(PL)の紫色の部分 |
次はユーロ。
トヨタ自動車-Uチャート分析:ユーロ(*EUR)
ediunet.com/company/7203/1/?moneyselect=1&m... 貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)ともに、Uチャートの大きさが大幅に変わりました。増減率を比較すると、円ベースより増加幅が大きいことが分かります。
科目 |
2004年 |
2008年 |
増減率 |
備考 |
総資産 |
2,490億ユーロ |
4,999億ユーロ |
+2.00倍 |
貸借対照表(BS)の円の大きさに対応 |
純資産 |
924億ユーロ |
1,828億ユーロ |
+1.97倍 |
貸借対照表(BS)の黄色い部分 |
売上高 |
1,954億ユーロ |
4,049億ユーロ |
+2.07倍 |
損益計算書(PL)の円の大きさに対応 |
当期純利益 |
131億ユーロ |
264億ユーロ |
+2.01倍 |
損益計算書(PL)の紫色の部分 |
最後はブラジルレアル。
トヨタ自動車-Uチャート分析:ブラジルレアル(*BRL)
ediunet.com/company/7203/1/?moneyselect=1&m... なんと貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)ともに円グラフが小さくなっています。すなわち、ブラジルレアルで決算書を見る限り、トヨタ自動車は2004年から2008年にかけて全く成長しておらず、逆に減少している、と言えるのです。
科目 |
2004年 |
2008年 |
増減率 |
備考 |
総資産 |
5,903億レアル |
5,505億レアル |
+0.93倍 |
貸借対照表(BS)の円の大きさに対応 |
純資産 |
2,190億レアル |
2,013億レアル |
+0.91倍 |
貸借対照表(BS)の黄色い部分 |
売上高 |
4,632億レアル |
4,458億レアル |
+0.96倍 |
損益計算書(PL)の円の大きさに対応 |
当期純利益 |
311億レアル |
291億レアル |
+0.93倍 |
損益計算書(PL)の紫色の部分 |
ここで為替レートの推移を確認しておきます。
為替レートの推移(※FRBのサイトより。対アメリカドル・レート)
通貨 |
2004年3月 |
2008年3月 |
増減率 |
アメリカドル(*USD) |
1 |
1 |
+1.00倍 |
日本円(*JPY) |
108.52 |
100.76 |
+0.92倍 |
ユーロ(*EUR) |
1.2261 |
1.552 |
+1.26倍 |
ブラジルレアル(*BRL) |
2.9067 |
1.709 |
+0.58倍 |
アメリカドルに対して、日本円は10%近く価値を増やし、ユーロは20%以上価値を減らし、ブラジルレアルは大幅に価値を増やしていることが分かります。
このように為替レートの推移が大きく異なるので、通貨によって5期分の決算書が大きく変わるような事態が生じる訳です。
最後に
日本人は、決算書を日本円ベースで読むケースがほとんどだと思いますが、このように通貨をユーロやブラジルレアルに変えることで全く異なる世界が見えてきます。「輸出産業は円高になると業績が悪化する」(いわゆる「円高不況」)ということが言われますが、では逆に円安だったら万々歳なのでしょうか。例えば、5年後1ドル170円(現在1ドル97円)になっているならば、日本円で売上高等が年10%増えたとしても、アメリカドルでは逆に減少することになります。それって幸せなことなのでしょうかね。
おまけ
EDIUNET.COMで、為替レートの自動変換機能に対応している通貨一覧。- アメリカドル(*USD)
- 日本円(*JPY)
- ユーロ(*EUR)
- オーストラリアドル(*AUD)
- ブラジルレアル(*BRL)
- カナダドル(*CAD)
- 中国元(*CNY)
- デンマーククローネ(*DKK)
- 香港ドル(*HKD)
- インドルピー(*INR)
- マレーシアリンギット(*MYR)
- メキシコ ペソ(*MXN)
- ニュージーランドドル(*NZD)
- ノルウェークローネ(*NOK)
- シンガポールドル(*SGD)
- 南アフリカランド(*ZAR)
- 韓国ウォン(*KRW)
- スリランカルピー(*LKB)
- スウェーデンクローネ(*SEK)
- スイスフラン(*CHF)
- 台湾ドル(*TWD)
- タイバーツ(*THB)
- イギリスポンド(*GBP)
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